温故知新 自動化アーカイブス 第7回

会報委員 渡辺 広志
株式会社東京自働機械製作所

標準化の話もいよいよ最終回を迎えました。それではお楽しみください。

記事目:自動組立機の標準化思考(その5)
執筆者:高久龍雄(キヤノンKK)
掲載号:自動組立ニュース1977.3〜1977.8(全6回)

<6>標準品を利用した自動組立機

*代表例と連載の総まとめ

「いよいよ今回で話がまとまるわけですが、最後に標準品、これは市販されてなくても社内で決めた標準品でもよいのですが、これらを使って自動組立機を作っている例を紹介しましょう。」

「最近、標準化されたユニットで組立機を作る会社が多くなってきたけれども、まだユーザサイドで考えると納得がいかないなあ。」

「しかし、歴史に耐えているメーカも多いのですよ。日本ではシチズン時計や三共精機のもの、米国ではカーギル社、ギルマン社。ヨーロッパではOKU社、機械加工と組立機のALBE社などは有名ですし、世界中に売られています。けれども非常に残念でならないのが各社各様の標準化である為に相互の互換性がない事です。」

「各社の内容を少し説明していただけますが。」

「シチズン時計社のシネクトンを見てみましょう。この機械はロータリ形とライン形の2種類が売り出されていますが、おそらくステーション単独のタイプも設計されているでしょう。ロータリ形(センターコラム形)には標準として6ステーションと10・12ステーションのモデルがありますが、割出しには特別な機構を使っていますので精度は0.01程度は可能でしょう。治具の取付制度や諸々を考えて±0.02〜0.05程度のワークに最適です。各ユニットがセンタ部分からのメカ連動と空圧や電気のリミットスイッチの信号で駆動させています。特にメカを上手に利用している所としては、P&Pユニットだろうと思います。これらのカムは動作の先端部で運動から静止に至るイナーシャをムリなくさせているので高速駆動に耐えられます。」

「そういえば、カム自体がサイクロイドや正弦変形のカーブになっていても、本当の動作をしているところが別の動きになってしまっていてはイナーシャやスピードが思うように行きませんよね。」

「特に複合動作をさせる時にはその事に注意が必要です。組立機はスイス型の自動盤カムとは少し意味が違っていますので、カムを使う場合はよく考えてください。」

(中略)

「その為には、日本全体の技術国力を上げる必要がありますね。そしてどうもコストコストで品質を置いてきぼりにする体質を直さなければこれからの低成長、実力露見時代には対応がつきませんでしょう。」

「その通りです。その事からも標準品を少しでも育成しなければなりません。」

「この様な機械をはじめて開発するとしたら、どんな所を注意して図面化したらよいのでしょうか。」

「本当の所、組立機メーカにあるものを使えば開発の必要はないのですが、どうしても大きさ等の性能やコスト面で合わないと考えるのならば、方法は2つあります。まず第一は、組立機専門メーカからツーリングをしていない機械、すなわちハダカの機械を購入する事です。そして自社でフィンガやフィーダ・治具などを設計製作して自社流に色づけすれば良いでしょう。」

「しかし、専門メーカがそんな売り方をしてくれますかね。テーブルやユニットを単体で売るより、フィーダやエスケープメント等の様にワーク特有の付加価値を付けて技術料を取った方が利益があるんだと思うけど。」

「それも考えられますが、むしろワークの特長は作っている所が一番よく知ってしるわけですから、むしろツーリングはユーザでやるのが一番です。それから第二の方法として、ユニットメーカのものをあちらこちらから特長のあるものを集めて、自社で得意のユニットと合せた組立機を作る事です。」

「そのときに注意する事はありませんか。」

「まず自社の組立機のイメージを固めることが大切で、それからそれに合う仕様を作り上げます。次にその仕様に合うユニットを集め、姿図の上で組合せてみて下さい。当然の事ですが、仕様は数値で表わしてなければどのユニットにしてよいか決められません。その数字を決めるのに最も良いのが標準数です。取付寸法やカン合部分などのユニット間を継ぐ寸法には約束ごとが必要になりますが、この約束は設計者の気分で決めていてはバラバラになってしまいます。ですからこの標準数で決めておけば安心です。また一つのユニットを設計する事によって、そのユニットを大きくしたり縮めたりするのに標準数で行なえば非常に楽です。市販されているパーツやJISで決められている部品など標準数に基づいているものが多いのでこれも便利です。」

「標準数は設計の基本で、必ず初歩の段階で教わっていますが、実際に設計する時には無頓着に数字を使っていますね。これは市販品で良いユニットやパーツがあるのにわざわざ設計したりしている行為と似てますね。」

「その通りです。これから設計される時にはできるだけ、いや多少ムリでも標準数で設計してみて下さい。必ず良い方向になってくると思います。」

「どこかでこの標準数を上手に使っている例はありませんか。我々はどうも良い例がないと信じない日本人的な癖がありましてね。」

「そうですね、BBS専用機を徹底して行なって急速にメーカとして大きくなった三協精機の専用機部門が良い例でしょう。ここでは完全に標準数を設計者にたたき込んでいますし、どうも機械のあちこちに使われている部品も標準化している様に見えます。これは専用機などを見本市で、じっくり見れば良くわかります。機械など目を細めて見ますと、標準数で作られた場合はなにかバランスの良さが感じられるでしょう。」

「それでBBS専用機はメーカとして安く作れるし、納期も早くなるわけですね。設計者も数値を決めるのに一苦労する手間がなくなりそうですね。これは実行してみましょう。」

「自社製の組立機を作る場合の二つの方法を話しましたが、メンテナンスや、より稼働率を上げ、できるだけ早く償却させる為にも、是非挑戦してみると良いでしょう。またそうする事によって組立機メーカの苦労のポイントもわかります。ですから仕様を書いてメーカに頼む時に互いに急所を早く決められるし、またコスト面で互に納得できて商売もスムーズに進むと思います。」

「良くわかりました。これからは今までの注意をもう一度ゆっくり計画を練って良い組立機械案を作ってみましょう。ところで、標準品を使い、そして標準化された組立機を作る事によってできる利益をまとめて話して下さい。」

「6回に渡って組立機の標準化について話してきましたが、工作機械がメーカごとに単独に標準を作ってしまい、世界的なムダをしてしまっています。当然メーカ自体の生産設備や設計ノウハウ、今まで市販した機械の信用とメンテナンス等を考えると、これからの標準化には無理があるでしょう。同じ事ですがビデオテープが日本を舞台に二極化してしまいおそらく将来大きな禍根を残すことになるだろうと思います。影響力が大きいだけに残念です。しかし、標準化も度を越すと画一的になりすぎ、世の中がおもしろくなくなってしまいますので・・・・・・。まあビデオも二つのシステムを結ぶ装置を誰かが考えるでしょうから良いでしょう。ビデオの様に単独に開発しても充分にペイするものなら良いのですが、産業用機械の様に利の薄いものではどうしても標準化して、量産効果を期待し、それによってユニットの信頼性を増して行く。ダブル効果を出さなければ生きて行けません。これから手掛ける方は、今回のシリーズを少しでも役立て、進めて下されば幸いです。あちこちで脱線もしましたがあしからず。またメーカ各社の事を深く知らずに色々話しまして失礼致しました。」

「いや我々も標準化について、自信を持ってやって行けそうです。これからの自動組立機を見て下さい。」

(おわり)前へ | 次へ