自動化こぼれ話(164)自動化とは機械を作ること

山梨大学名誉教授 牧野 洋

自動化の定義にはいろいろなものがある。その中で一番簡単な定義は「今、人手で行なっている作業を機械に置き換えること」である。

ここで二つの立場があり、一つは人手作業をそのままの形で自動化しようとする。これはロボットの立場である。風呂敷で包んだ菓子があれば、風呂敷を包む作業を行なうロボットを開発しようとする。

もう一つは、その作業の目的を考えて、同一の効果を生む機械を作ろうとする立場である。これは専用機の立場である。菓子を風呂敷で包まなくても、包装ができれば良いのであるから、プラスチックで、たとえば真空パックにしてしまおう。

どちらの立場をとるかは、その製品の狙いにも関係し、安く作りたければ後者の専用機になるかも知れないし、伝統の風味を生かしたければ、前者のロボットを開発することになるかも知れない。

しかし、いずれの場合にも、言えることは、そのための機械を作らなければならないということである。機械を作らなければ自動化はできない。自動化したいという気持ちだけでは自動化はできない。何年たっても自動化されない工程の何と多いことか。

それはおそらく、自動化しなくても良いからではなくて、自動化したいのに適当な機械がないからである。既存の機械では、検討したけれどうまくいかない。あるいは、既存の機械と言えるものがない。だから、自動化できない。(そうして何年も経った。)

この人は自動化というものを間違って考えている。自動化は天から降ってくるものではない。自動化とは、機械を作ることなのである。自動で生産する機械を作らなければ自動化はできない。おそらく、その機械は新しい機械なのであり、(だから、市場にないのだ。)新しく開発しなければならないのである。

自動化とは、その新しい機械の開発に向けて一歩を踏み出すことなのである。