AIの進化が自動化技術を変える。誰が担うのか?

吉川技術士事務所 吉川 博(自動化推進理事)

最近、人工知能(AI)関連の技術進化が著しい。グーグルが実証実験を繰り返している自動運転自動車やプロに連勝した囲碁ソフト〔Alpha Go〕では、特定分野の能力で一般的な人間の判断力を超えているようだ。

次々と進化するIT・AI技術が、生産現場にも応用され「ものづくり」における自動化技術のステージが大きく変化してきている。

世界的にも大きな潮流の変化が進んでおり、ドイツのシーメンスやVW、ボッシュ社等が進めるIoTベースの生産技術であるIndustry4.0、アメリカではGE社が中心になって展開しているIndustrial Internet と話題に事欠かない。いずれも新しく考え出されたアイデアではなく、今までに開発、活用されてきた枠組みであるが、近年のネットウェア構築技術の進化と、コンピュータ処理能力の画期的な進化が現在の状況をもたらしているといえる。

自動化推進の立場では、自動化実現可能性の増大と自動化技術活動領域の拡大の両面で、たいへん期待の持てる時代を迎えていると肯定的に評価してもいいのではないかと思う。

一方、我が国のものづくりの現場では、数十年前に設備された生産機械を現場技能で何とか使いこなし、「すりあわせ」の技能を駆使し統計的品質管理の範囲内で何とか無難に製品を作り続けている。これが現状の大方の中小企業での実態に近い。

では、この落差をどのように埋めていけば、我が国の製造業の輝きを取り戻すことできるのだろうか。

そのためには、ありきたりではあるが時代のニーズに適合した技術者の成長に期待するしかない。その一端で活動、貢献してきた自動化推進協会主催の自動化技術基礎講座についても、その内容の大幅な見直しの時期に来ていると思う。従来の機構学(メカニズム)技術を基本としながら、サーボドライブのみならず人工筋肉のような柔軟なパワーデバイス、ピエゾ等の高精度デバイス等の活用技術との組み合わせやそれらを制御するコンピューターソフト等をテーマとして取り上げなければ、現在の自動化システムは成り立たない。

自動化推進協会内においても、その認識は共有しているが、ニーズへの適合化へのアプローチに対する議論の収束が遅れている。早急に講座カリキュラムの改善や新規講座開設等の対策がなされなければ、本会の社会的意義を逸失してしまう。

私自身プロフェッショナルとして本会の活動にのめりこむには躊躇することが多々あることは事実であるが、可能な範囲で少しでも前向きに進み成果が得られるような努力を継続したい。諸先輩の築かれた珠玉の成果を生かしながら自動化推進協会の末端で貢献できる機会が得られることを幸せに感じている。