自動化技術支援センターの夢

株式会社ケンモチ 剱持惣一郎(自動化推進協会理事)

今月は昨年1月に設立された自動化技術支援センターについてご紹介したい。本協会はこれまで主に精密工学会の専門部会を中心とするacademic界及び関連業界の会員の努力により、40年に渡り日本の製造業の自動化推進に多大な貢献をしてきた。しかし活動の領域は教育産業の範疇に留まり、現今の日本の製造業が抱える課題には十分答えていないのではないかとの反省の機運が生じ、それを契機に生まれたのが、自動化技術支援センターである。では発足の契機になった問題意識とは何か、それは次の事である。

(1)製造業社内に生じている生産技術の断絶と技術者の不足、
 その結果として、製品コスト競争力の深刻な低下
(2)前回の不況でリストラされた有能な技術者の海外流出、
 その結果として、強い競争相手の出現と国内の空洞化

上記はコインの表裏をなし、世上論じられて久しい問題である。勿論本協会が実施している各種技術教育事業もこの問題への有効な解決手段ではあるが、然し、教育は本質的に一般解を教え学ぶものであり、企業が抱える個別具体的な焦眉の課題の解決には間に合わない憾みがある。一方で目を転ずれば、日本には元気で意欲もあり脳髄には現場の貴重な経験とノウハウが満ちた退職技術者が沢山いるにも関らず、この貴重な資源が徒に国外に流出している。この資源を再び日本社会に還元する方策は各方面で論じられているが、本協会には他にない利点がある。即ちNPO法人という公正で自由な立場と、40年間の成果である日本一の生産技術ノウハウの蓄積である。それを承知で本協会が手を拱いていては不作為の謗りを免れないと発破を掛けたり扇動したりする応援団もいて、それは大変有難いことだが、  現実的には難しいことが多い。自動化技術支援センターは昨年1月に発足後、最初のクライアントT社と自動化支援契約を結び、牧野名誉会長を含む数名の会員有志でタスクフォースを結成し、現在T社と一体になり製造工程自動化を鋭意進めている。この様に幸い良いスタートを切ることが出来たが、難しいのは今後センター事業を本協会の柱の一つとして継続することであり、そのためには、

(1)センター活動のPR
(2)センター要員の募集(人材データベース登録)
(3)産技術データサーバの構築(会員限定)
(4)センター組織と規約の 整備と正式な承認
(5)公的機関との連携強化、等が目下の急務である。

就中、(2)項はセンター事業にとって最重要の課題であると同時に、退職エンジニアを組織し動機付けし報酬を適正に分配するという非常に難しい問題でもある。果たして成功するか夢で終わるか、是非多くの方々の夢を実現させたい。