自動機とセットの製品開発

三菱電機株式会社 秋田 裕之(自動化推進協会理事)

三菱電機の多種多様な製品に、ポキポキモータと呼ぶブラシレスDCモータが採用されている。ポキポキモータは、前号で紹介された通り円形のステータが表裏に展開できる構造をしているためコイルの巻線がしやすく、高密度巻線によりモータ性能を高めることができる。製造工程では巻線するときに鉄心をポキポキと変形させる必要がある。汎用の巻線機にはない機能であり、ポキポキモータと巻線機をセットで開発する必要がある。一つの設備の中で巻線と鉄心変形を繰り返すことでコイルを切断せずに連続した巻線が可能となり、性能と生産性の向上を両立した。

青色LEDやネオジム磁石を始め、生産技術が製品実用化の鍵になっている例は数多く日本の得意分野といえる。これらの製品では生産技術や製造プロセスを具現化するための自動機の開発だけでなく開発段階で生産技術を設計に織り込むことによって、製品の付加価値をも高めることができる。一方で生産現場からは、再現性の高さ(品質)、使いやすさ、生産速度、生産変動への順応などが求められる。自動化技術者は、性能設計の都合と生産現場の都合を仲介し総合でものづくりをコーディネートすることで、性能と生産性の向上を両立させる絶好の機会が与えられている。

さらに日本が工業製品でグローバル競争力を維持するためには、自動化技術は一段高いレベルに進化し続ける必要がある。日欧米などの高付加価値市場と新興の大量消費市場で同じ思想の自動機を用いては、品質、コスト、デリバリーが必ずしも最適条件とはならない。自動機の仕事の内容は、生産技術を具現化する高付加価値工程と、部品の運搬や位置決めなどの低付加価値工程に分離できる。市場要求に合わせて自動機の中の無駄取りを進め高付加価値工程の割合を高めることがグローバル展開での鍵となり、ここでも製品とセットで考えることでより有効な解が得られる。

このように考えると、国内空洞化や若者の技術離れに危機感が募る中で、逆に日本の特性が活かせるチャンスではないかと思う。私の周囲では、生産技術者が現場改善で現実を知りそれを製品開発にフィードバックするサイクルが定着しており、私もその伝統を守りたいと考えている。身近な若手は自動化技術に燃えており、特許を書き、自分のアイデアが詰まった製品が世の中に出て、自分が設計した自動機でものが作られ続けることにやりがいを感じてくれている。前述のように、自動化技術の立場は製品性能と生産の「摺り合わせ」の機会が与えられている。「摺り合わせ」というチームワークが得意で、1+1=2以上とするひと知恵加えた足し算が得意である日本人を、「和」という文字に置き換えることができる。元気な企業の諸氏と意見を交わす度に、オールジャパンで臨めば単に足し合わせる以上の結果を出す気概を感じる。従来、諸先輩方がやってこられたのと同じく、「和」の精神をもってそれぞれの力を結集して自動機とセットで製品開発をすれば、ますます日本のものづくりを強化できると確信する。