自動化こぼれ話(137)電波時計

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 私の恩師西村源六郎先生は時計学会の会長であったが、頭の中で正確に1分間の時を刻むことができた。「ハイ」と言ってから目を閉じ、次に「ハイ」と言うまでが正確に60秒。プラスマイナス1秒の誤差で実現できる。これを実際に学生の前でやってみせた。

 そのやりかたはどうするかというと、頭の中で時計を思い浮かべ、秒針が一回りするのを測るのだそうである。ディジタルに数を数えるのではなく、アナログに一回りというところが面白い。

 もっとも、3秒であれば私にもできる。NHKニュースの始めに出てくる時報の画面を思い浮かべ、「ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぽーん」とやるのである。これで正確に3秒を測ることができる。

 最近、機械の制御の問題と取り組んでいるが、複数の軸の間の同期を取るのがなかなか難しい。1ms(ミリ秒)以下の精度で同期を取りたいのだが、サーボドライバの動作遅れがある上に、通信の遅れだの、それぞれのCPUが持っている時計の誤差だのが影響するようだ。

 たくさんの軸をつないで、同期信号をいっせいに送るなどということをしないで、8時0分0秒000にいっせいに多数の機械が動き出すというようにできないものだろうか?

 電波時計が腕時計のなかに入ってくる時代だから、そんなことは訳ないと思えるのだが。

 世界中の目覚し時計をいっせいに鳴らしたいというのが私の夢である。