自動化こぼれ話(134)カルテシアン

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 ロボットの営業を担当している人から「カーテジアンとは何ですか?」という質問を受けた。カーテジアン、カルテジアン、カルテシアン、―――直交座標系のことをいう。私が学生の頃には「デカルト座標系」といった。デカルト(Des Cartes)はフランスの数学者で、冠詞Desを取り、形容詞にするとCartesianとなる。

 平面上の点の位置を表すのに、原点から右方向けてx軸を取り、上方に向けてy軸を取って、(x、y)の座標で表す。空間の場合にはもう一つの軸zをx、yに直交する方向に取って座標(x、y、z)で表す。つまり現在われわれがが普通にやっているやり方である。

 z軸の取り方には二通りがあって、右手の親指、人差し指、中指の順にx、y、zを取るのを右手座標系、左手の親指、人差し指、中指の順にx、y、zを取るのを左手座標系と言い、右手系が標準として用いられている。ついでながら、軸をいろいろな方向に回しながら図を描こうとすると右手座標系ではやりにくい。デカルト左利きだったのではないだろうか?  この表示の仕方は余りにも普通のやり方であるから、現実の空間のことをカルテシアン空間という。これに対して、ロボットでは回転関節が用いられることが多いから、例えば三つの関節の回転(θ1、θ2、θ3)によって工具点の位置を表現することも出来る。これを軸空間という。軸空間からカルテシアン空間への変換を順機構解、その逆を逆順機構解という。直交軸だけで構成されたロボットは変換の必要がない。これをカルテシアン・ロボットという。

 さて、デカルトは哲学者でもあった。デカルト、カント、ショーペンハウアーの3人を纏めてデカンショという。

デカンショ、デカンショで半年暮らす
                 あとの半年は寝て暮らす

ロボットの開発はあとの半年を寝て暮らすわけにはいかないようだ。