自動化こぼれ話(130)工場レイアウト

山梨大学名誉教授 牧野 洋

 新設の工場を見に行った。広々とした建物の中に機械が整然と配置されており、気持ちがよい。生産は一部始まっているが、まだフル生産には至っていない。トレーラー式のAGV(自走台車)が3台片隅に置いてあり、これはフル生産が始まったらその状況に合わせて床に電線を埋め込み、その経路に沿って動かすのだという。

 「待てよ」と、ここで私は考えた。

 これは玉に糸を通すやり方ではないか? 糸に玉を通さなければいけないのではないか?

 工程で使う機械(玉)は考慮されているのだけれど、その 工程間を流れるワークの流れ(糸)は考慮されていない。 フル生産になった時に、糸がばらばらに乱れる可能性がある。ましてそのワークの中には、長尺物がある。長さが7〜8mもある材料があるのだ。これをさっきのAGVで運ぶとすると、回転半径はどのくらいいるだろうか? 一度長い竿を担いで通路を歩いてみて欲しい。

 これがもし、工場でなくて駐車場のレイアウトを考えるのだとすれば、駐車スペースだけを考えて車の出入りのコースを考えないということはまずないだろう。工場の場合にも、そこを流れるワークの動線を、ぜひ考慮してもらいたいものである。