新しい自動化技術の理念の構築と普及

セイコーインスツルメンツ(株)相談役
伊藤 潔

 自動化推進協会が今年で30周年を迎える記念すべき年であるとのこと、誠にお目出たく御祝い申し上げます。と同時に、30年も経過した時間の速さに感無量の念を禁じ得ず、過去の活動が走馬灯の如く駆け廻ります。

 当協会の前身である自動組立懇話会の設立は当時の山梨大学助教授である牧野先生の熱意と努力の賜物であり、その恩恵が30年に亘って輝いているわけで、設立以前から組立自動化活動に参加させて頂いた小生にとりましては、何とも言いがたい喜びであります。しかし、我が日本の自動化活動の歴史を振り返ったとき、精機学会の自動組立専門委員会の活動を忘れることはできません。自動組立専門委員会の設立は当時の山梨大教授の谷口先生の意向を受け、実行責任者として牧野先生が動かれて発足した日本の自動組立歴史の第一頁を飾る由緒ある委員会であることは、言うまでもないことですが、当委員会の活動と成果を小生は次のように理解しております。

(1)1960年代の製造企業の最大関心事項は、品質向上と量産性確保でありましたが、自動化推進の重要性を啓蒙し、その成果理念を徐々に実績化させた。

(2)この活動を委員代理者の若手に委ねることを拒絶せず、むしろ歓迎し指導し活性化に結びつけた。

(3)1969年、多くの若手技術者も含めた自動化研究調査団を結成、米国へ派遣し実体験を通じ啓蒙した。

(4)当時の生産工程へ自動化という視点から焦点を当て、従来思考と異なるプロセス変革を提示し促進した。

 つまり、組立自動化の概念の統一化と具象化を促し、将来の重要性を示唆した基本活動であったと思う。そして、その応用段階への発展が、次のステップである自動組立懇話会、自動化推進協会へ継承され、日本の製造企業にとって組立の自動化ばかりでなく、あらゆるプロセスへ挑戦する基盤形成になったように思います。しかし、この改革活動は、大量生産のQCD向上の面では著しい成果となりましたが、多種少量生産とその切替という点では未解決のまま推移し、それが海外の低人件費依存に繁がっていると思われます。80年代までの機能価値中心の商品から、感覚価値中心の商品への移行という市場ニーズ対応が求められる時代に、自動化技術の革新、自動化推進の理念・概念をどう構築するのか、30周年を迎えた当協会がいかなる展開を示すのか、以下の項目に、大いに期待しております。

(1)多種少量生産プロセスと自動化技術のマッチング

(2)感覚価値商品の生産プロセスでの低コスト化とスピード化に、いかなる技術展開を図るか、その具体策

(3)新自動化技術のベースコンセプトの明確化

(4)若手技術者や管理者の活動意欲の増大刺激化