新しい自動化技術を創出しよう

自動化推進協会 会長
早稲田大学理工学部機械工学科 教授
菅野 重樹

 本年2002年、自動化推進協会は30周年を迎えます。昨年5月より新たなる飛躍のために、常任理事を中心として改革と新しい構想を検討してまいりましたが、いよいよそれらを実践するときがきました。

 2002年に入り、産業界ではますますコスト管理が厳しくなり、人件費削減のための国際化が一層進むことになるでしょう。また、完全自動化の難しさが人間によるセル生産を次々と生み出しつつあります。この状況は、製造業の高収益・高機能を実現する手段であるはずの自動化技術が、その要請に十分に応えられていないことを意味しています。本年は、自動化の原点に帰りつつも、オープン化を柱とした日本の新しい産業基盤育成方策を採り入れることで、次世代の自動化を考えてゆきたいと思います。会員諸兄のご協力とご指導を何卒よろしくお願いいたします。 ところで、昨年暮れから今年にかけて、2つの興味ある話を見聞きしました。

 一つは、岐阜県の地場産業である陶磁器の製造現場を見学したことです。中国からの極めて安い輸入品に対抗するために、どのような方法論が可能かを岐阜県セラミックス技術研究所が中心となって検討しています。見学して驚いたことは、完全自動化とは言えなくても、ノウハウに基づいた自動化がかなり進んでいることでした。問題は、付加価値を高める方策として自動化が寄与できることを 見つけることです。陶磁器などの美術工芸品の場合、絵柄の筆塗りが最も高付加価値となります。そこで一つの案として、メカトロ技術によりオーダーメードの筆塗りに近い絵柄の自動作成ができれば、個々人への対応という意味で付加価値を高められそうです。しかし、システムが完成すればこの技術も簡単に外国へ移転できてしまうでしょう。

 もう一つは、日本発の国際プログラムとして進められているIMS(Intelligent Manufacturing System)の会合に出席した後の、企業の方の感想です。経済産業省の製造業空洞化に対するスタンスと、日本企業の海外進出意欲の微妙なズレを感じました。経済産業省からは、「IMSは国際化が基本だが、政府としては日本の企業の発展を望んでいる。空洞化に対して何らかの効果を発揮するような新しいIMSの枠組みを考えられないだろうか?」という希望が述べられました。しかし、ある企業の方は、「日本企業は生き残るため、より発展するために外国へ進出しているのだから、空洞化といってもそれが日本企業を発展させる方向にあるのだ」といわれました・・・・。

 これらの話はいずれも、日本が常に新技術開発でリードし続ければ解決へと向かうように私は信じています。やはり鍵となるのは、新しい自動化技術の発展であり、それはまさに自動化推進協会の目指すところではないでしょうか。