飽くなき物作りへの探求

大竹技術士事務所 所長
自動化推進協会理事
大竹 昭

 思い起こせば、この道の始まりは、少年時代の機械いじりだった。手始めはぜんまい式柱時計を直そうとして、バラバラにして使いものにならなくしてしまったのが、そもそもの始まり。木と紙で作った五重塔の模型、アルミの板から羽根を作った手製の扇風機、錘の力と滑車を利用した玄関の自動ドア、本棚のカーテンの自動開閉装置、ゲルマニュウムラジオ(電源要らずでいつでも聴ける)と進んで、気が付いたら社会人になって自動機の設計をやっていた。

 そうなったらもう家に帰って、模型作りや機械いじりはしなくなった。仕事で創造力を発揮することに満足を得られるようになったからだ。すなわち私にとって仕事は趣味の続きであった。

 このようにして、いまだにずっと機械いじりの延長である。物作りの世界で、好きなことを仕事として、たまたまやってこられたことに対して、本当に幸せを感じている。薬師寺の西塔は1981年に再建された。高さが現存する東塔より約30センチメートル程高い。何百年かの間に材料のヒノキ材が変形して東塔と同じ高さになることを計算の上なのだそうだ。まさに宮大工職人たちの匠の世界である。

 物作りの技術はこのように、匠といわれる人の頭の中にある。すなわち人間は人間から学ぶのである。人間はまだまだ未知の部分がほとんど。そのハード(人間工学)やソフト(知的作業のプロセス)は、まだ殆ど解明されていない。人間が やったことは現場や現物に結果として残っている。物作りの現場の大切さ,常に事実から学ぶことの多さを今さらながらに感じる。

 技術者は事実をしっかりと見据え、現場というデータの宝庫に目を向け、弛みない努力を継続していくべきである。そのためには、仕事を仕事と思わず、まずは好きになる(努力をする)ことである。また年齢に関係なく、いつまでもやっていきたいものである。技術者だからこそで、例えば60歳は人生の一通過点でありたいと私は思う。

 外に目を向けることも必要、しかし自分たちの現場(足元)にも目を向け、今まで気が付かなかった新たな発見をすることも大切である。

 皆さんの会社にも匠がいませんか。現場に埋もれて技術が継承(移転)されていないということはありませんか。改めて今一度足元(現場)を見つめ、地に足のついた技術活動をしていく必要牲を痛感します。目的意識をもって飽くなき物作りへの探求を皆さんと一緒にしていきたいと思います。

 今年から協会のホームページも本格的に活動を始めています。会員の皆さまへより多くの有益な情報を発信していきたいと思っています。皆様も身近な有益な情報がありましたら、逆に発信してください。ますます充実した、魅力のあるホームページ作りをしていきますので、忌憚のないご意見やアドバイスをお待ちしています。